天空の蜂_東野圭吾氏 -映画を観る前のネタバレなしレビュー-
高速増殖炉「もんじゅ」
『wikipedea「もんじゅ」より引用』
【天空の蜂】がようやく映画化される。
この小説を初めて読んだ時、ぜひ映像で観てみたいと思っていた。
発刊当時は映像化が難しかったそうだ。
【あらすじ】
自衛隊から盗み出された超大型ヘリ(通称ビッグB)には爆薬が積み込まれている。
それを稼働中の原子力発電所に落とすという脅迫が政府や関係者にあった。
ヘリは無人操縦されており、燃料が尽きれば落ちてしまう。
犯人の要求は何か?
政府はどう答えるのか?
事態をさらにややこしくしているのは、偶然が重なったため、ヘリには小さな子供が乗っていること。
どうしたら救えるのか?
ヘリの燃料切れまでの僅かな時間の中で、怒涛のストーリーが展開されていく。
【感想】
この小説が発刊されたのは何と1995年。
小説内の高速増殖炉「新陽」のモデルと思われる「もんじゅ」が前年に稼働し始めたばかりの頃である。
発刊直後にこの「もんじゅ」からナトリウム漏洩事故が起きている。
チェルノブイリの例もあるが、高速増殖炉がどんなものなのか?その危険性も書かれている。
そして言わずもがな。福島の原発事故である。
また大型ヘリをラジコンを扱うがごとく盗み出し、標的の上でホバリングさせてしまう。
自衛隊基地に忍び込んで盗むのなら現実的でないが、そうではないところがうまい。
ヘリそのものに関しても、まるで福井晴敏氏の小説が如く、リアリティがある。
ありそうだな..と思わせてしまう。
大型小型の違いはあるが、今であればドローンで同じことをしたらどうなるか?
テロリストを扱う小説はどれも緊迫感があって当然である。
しかし、ここまでリアリティのある小説を20年前に書けてしまうことが半端ではない。
東野圭吾氏には先見の明があると言ってしまえば簡単であるが、イマジネーション一つでここまで書けるものなのか?
ストーリーも単に原発にヘリを落とす落とさないという話ではない。
その場合、落としても原発は安全か?という一点のみの視点になる。
しかし、ヘリに子供が乗っていることで展開が全く見えなくなっている。
ヘリが無人なら、政府の対応は大体想像が付く。
政府が最も重要視することは現政権の維持である。
そのためには多少の犠牲は切り捨ててしまう。
しかし、子供一人とは言え、日本中が注目している中でそれはできない。
ではどうするか?
政府が取った手段はさすがというか、姑息というか、よく考えつくなという手だった。
そして息詰まる救出劇。
一度はうまくいったと思わせるところがうまい。
どう映像化するか最も楽しみな部分でもある。
この作品も犯人探しより動機重視と思われるため、犯人は読者の側には早々とさらされる。
それによって興味が削がれることはもちろんない。
むしろ、この人物がなぜこのようなことをと言った「動機」や「背景」が明かされるにつれ、話にグイグイ引きこまれていく。
文中、ヘリや原発に関する専門用語も数多く出てくる。
それらを斜め読みしても小説の進行自体に支障はなく、読み進められる。
しかし、作者としては原発に関するものだけでも、読者に知って欲しいのだろうと思う。
最近の東野圭吾氏はミステリーに留まらず、社会派小説中心であり作品はメッセージ性が高いものが多い。
この作品にも原発に関することに多くのメッセージが込められている。
原発問題について、国民一人一人に考えて欲しいということだ。
私自身、大変恥ずかしいことに福島原発事故の後、あらためてそのことに思い知らされることになった。
【ストレス解消度】
思いっきりストレス解消できた~!と言いたいところだが、読んだ後にかなり考えさせられることになった。
よってストレス解消度は1である。
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